丹後・宮津に宿る、静謐の美。五感で巡る「mizuya」の体験

こんにちは。

こ/こと編集部です。

京都府北部・宮津の町並みにそっと溶け込むブティックホテル「mizuya(ミズヤ)」を訪問。

宮津駅から歩いて5分、住宅街の中に静かに佇むその姿は、まるで町の景色の一部のよう。

提供:mizuya

外観からは想像もつかないような、豊かで丁寧な空間が、扉の先に広がっていた。

今回、モデルのRieさんと一緒に、mizuyaの魅力を実際に体験してきた。

Rieさん
Rieさん

関西を拠点に、フリーランスモデルとして活動するRieさん。

カメラを持って、さまざまな地域へ旅行し、その土地の素敵な風景を撮影することが長年の趣味。

Instagram(@pny_pt

宮津の歴史を紐解いて辿り着いた名の由来

ホテル名「mizuya」は、名の通り水屋が由来となっている。茶室における裏方や、神社で参詣者が手や口を清める手水舎といった意味を持つ「水屋」。

古くから京の都への入り口を担ってきた宮津の風土を表すのにふさわしい言葉だと考えた。

目立ちすぎず、凛とした存在感。そんなコンセプトが、そのまま空間全体に息づいていた。

さらにもうひとつ。

宿の名「mizuya」は、実は地名「MIYAZU(宮津)」のアナグラムにもなっている。

まちの名を内に秘め、地域と一体になる存在でありたいという、設計者たちの遊び心と敬意の表れ。

旧「宮津市福祉センター」の建物をリノベーションする中で、壁紙の奥に残っていた建設当時のメモ書きは今も残されている。

館内は、あえて残されたコンクリート打ちっぱなしの姿と、新たに施された内装が共存しており、遊び心を感じさせる。

茶の湯の作法が息づく客室

各客室には、小さな“水屋”がしつらえられ、鉄瓶や茶釜が静かに置かれている。

驚いたのは、抹茶を点てるための茶筅や棗といった茶道具まで備えられていたこと。

自ら湯を沸かし、茶を点てる。

何気ないようでいて、心がゆっくりと整っていくひととき。

無垢材の床、黒谷和紙の壁、丹後ちりめんのカーテン、素焼きの器。

部屋の中には、素材そのものの息遣いが生きていた。

湯気、香り、光の揺らぎ。

五感が静かにほどけていく感覚。

mizuyaの客室

提供:mizuya サウナスイート(42㎡・ダブルサイズベッド2台・プライベートサウナ)
提供:mizuya デラックス(28㎡・クイーンサイズベッド1台)
提供:mizuya スタンダード(26㎡・クイーンサイズベッド1台)

工芸の息吹に包まれる空間

香林居やHOTEL SHE,KYOTOの開発・運営を営む「水星」がプロデュースを担当。

地元・丹後の「京都丹後企画」がその意志を引き継ぎ、これからのmizuyaの歴史を紡いでいく。

宿の随所には、丹後や京都の工芸家たちによる手仕事が取り入れられていた。

藤織作家の坂根博子さんによるルームナンバーサインや、和紙職人・ハタノワタルさんの和紙壁、テキスタイル作家・原田美帆さんによる刺繍布。

客室には丹後ちりめんのカーテンが

職人たちの手から生まれた作品が、宿の空気に深みを与えていた。

ラウンジスペースには、アートキュレーター・堀正樹さんがセレクトした作品群。

日常とは少し違う視点を思い出させてくれるアートとの出会いも、この宿ならではの醍醐味。

歯ブラシなどのアメニティも木が使われ、「mizuya」のロゴが記されている。

菓寮 浮雲─朝と昼、二つの顔をもつ茶寮

1階の「菓寮 浮雲」は、宿泊者の朝食会場でもあり、昼は和菓子と茶を楽しむカフェ、夜は地元の食材を使った軽食や地酒も味わえるバーとして利用可能。

時間によって異なる表情を見せる、ホテルのもうひとつの顔。

朝食の時間帯には、料理家・庄本彩美さんが監修する和の御膳が提供される。

提供:mizuya

内容は、丹後の郷土料理「ばら寿司」に着想を得たお膳。

色とりどりの旬菜や地魚が丁寧に盛り付けられ、目にも美しい仕上がり。

滋味深い味わいが、旅の一日のはじまりを豊かに彩ってくれる。

提供:mizuya

そしてカフェタイムには、小島直子さんによる創作和菓子と、老舗・磯野開化堂の日本茶を組み合わせたペアリング体験。

提供:mizuya

たとえば、ガラスのように透き通った琥珀糖や、天橋立の松林に見立てた蒸し菓子など、見た目にも詩的な甘味が並ぶ。

器やお盆にいたるまで、丁寧な心配りが感じられる時間。

提供:mizuya

日が沈むと、バータイムがスタート。

日本酒や焼酎を中心に、軽やかなおつまみとともに、穏やかな宵を過ごせる空間へと変化する。

自然に溶け込む、静謐なサウナ時間

福祉センターの足跡を感じるスロープを上った先には、プライベートで利用できる予約制の貸切サウナを完備。

天然の石材と木材を使った設計は、まるで森の中にいるような感覚。

提供:mizuya

室内は最大4名まで、90分制で予約可能。

セルフロウリュで立ち上がる蒸気。

じんわりと身体を包みこむ熱。

外気浴スペースから臨む中庭の木々と潮風が、心をやさしく整えてくれる。

宿泊者専用のサウナ付き客室も2室あり、滞在の中でプライベートに“ととのう”贅沢も味わえる。

滞在を通じて、地域を味わう

mizuyaの魅力は、空間の美しさや食の豊かさだけにとどまらない。

まちと宿、宿と人、地域と来訪者。

そのすべてが、ゆるやかに繋がっている。

観光地としての宮津を超えて、この土地の文化・風土・人の営みと出会う場として、mizuyaは機能している。

まさに“暮らしのような滞在”。

それこそが、この宿の本質。

mizuyaの基本情報

施設名mizuya(ミズヤ)
所在地京都府宮津市鶴賀2085番地
アクセス京都丹後鉄道 宮津駅より徒歩5分
客室数全9室(うち2室はサウナ付きスイート)
開業日2025年5月1日
併設施設・菓寮 浮雲(朝食/カフェ/バー)
※朝食は宿泊者限定。
※カフェは非宿泊者も利用可能。事前予約制。
※バーは非宿泊者も利用可能。

・プライベートサウナ(要予約)
予約方法Chillnnより予約可能
公式HPhttps://mizuya-kyoto.com/

mizuya|まとめ

朝、茶を点てるひととき。

昼、和菓子とともに味わう静けさ。

夜、サウナで整う解放感。

mizuyaでの体験は、日常の延長にある非日常。

そのすべてが心に優しく響く宿だった。

丹後・宮津という場所に、新たな魅力を見出すきっかけとして、mizuyaはこの土地の未来を照らす一灯。

次は、泊まりでじっくりと浸ってみたい。